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治療とその選択
再発した非浸潤性乳がんのホルモン療法について
えむ (海外在住) 2017/10/03
再発した非浸潤性乳がんで全摘手術を受けた後、対側の予防のため5年間のタモキシフェンの服用を勧められました。

日本では、どのような場合に無治療またはホルモン療法がすすめられるのか、また、全摘後のホルモン療法が対側の予防になる仕組みについて簡単に教えていただけないでしょうか。


非浸潤性を全摘したのだから、ゼロにはならなくても心配するほどの再発率はないはずなので無治療で構わないというのは理解できます。

もし対側に乳がんが出来るとして、それはホルモン受容体がないタイプかもしれません。それなのに、子宮体がんのリスクを抱えてまで抗ホルモン剤を5年間も飲む意味があるのでしょうか。

ホルモン受容体陽性のガンはもう手術で取ってしまったはずなのに、抗ホルモン剤がなぜ予防になるのでしょうか。

半年毎に検診に行っていますしこれからも続けなければいけません。もし対側に乳がんが出来ても早期発見できるはずでそれで十分ではないのでしょうか。


昨年、右乳房に石灰化が見つかり非浸潤性乳がんが分かりました。4月に部分摘出手術と放射線治療を受けました。トリプルネガティブ、コメド型、Ki-67は5%、センチネルリンパ生検陰性、断端陰性でした。

今年、また同じ右側に非浸潤性乳がんが分かり、全摘手術を受けました。エストロゲン受容体陽性20%、プロゲステロン受容体陰性、Her-2陽性、コメド型、Ki-67は40%、断端陰性でした。

一昨年から右も左もシコリや石灰化が度々見つかり、それぞれマンモトーム生検を二回ずつと超音波コア針生検を一回ずつ受けています。この内、右のマンモトーム生検二回でガンが見つかって手術しました。


全摘すれば術後は無治療と乳腺外科のドクターに言われていましたが、念のためにと勧められて受診した腫瘍内科でホルモン治療をと言われて混乱しています。少しでも不安をなくしてきちんと治そうと思って受けた全摘手術の後で、今度は子宮体がんの心配をしなければならなくなることに戸惑っています。

   
Re:再発した非浸潤性乳がんのホルモン療法について
田澤(東京都) 2017/10/08
えむさん

初めまして、医師の田澤と申します。
ご質問いただきました件について私たちから簡単にですが、お返事させていただきます。
まず、想定されていなかった治療の提案があったとのことで、大変でしたね。
また文面からえむさんが非常によく勉強されて、ご自身のご病気としっかりと向き合っていらっしゃる姿勢を垣間見ることができました。素晴らしいことだと思います。

さて、もしかすると今回の腫瘍内科の先生からの提案を外科の先生とは違う意見を言われたように感じられていらっしゃるかもしれませんが、必ずしもそうではないと思います。
腫瘍内科の先生のご意見はあくまでも今回切除をされた方の乳がんの治療ではなく、「対側乳癌の予防」という意味合いが強いものであると考えられるからです。
外科の先生の「念のために」というのはそういったことも含めて腫瘍内科の先生のご意見を聞いてみましょうということだった可能性もあるのではないでしょうか。

予防についてですが、えむさんの仰るように、万が一また病変が出てくるとしても、どんなものが出てくるかということについては、誰にもわかりません。
ですが、一般に多くの病変はホルモン受容体陽性であることから、抗ホルモン剤を飲むことで新たな病変が出現する可能性を下げることを期待するものだということです。
ご存知かもしれませんが、乳癌の増殖を促すエストロゲンがエストロゲン受容体と結合するのを妨げることにより、
ホルモン依存性の乳癌の増殖を抑える作用があり、再発や「新たな乳癌の発生を抑制する」ことがいくつかの臨床試験からわかっています。

えむさんのような状況では、今回の腫瘍内科の先生からの提案のように予防を目的とした治療をするかどうかを
子宮体癌発生のリスクを含めた副作用とのバランスで患者さんごとに検討し、ご本人と相談する必要があります。
あくまでも予防をしなければならない、というニュアンスではないということです。
えむさんの仰るように、もし対側にできても早期発見すれば問題はない、という考え方をすることもできると思います。
一方では、抗ホルモン剤を飲んで予防をするという考え方もあるとは思います。
複数の病変が別々にできた場合などでは新たな病変ができるリスクが高いと考えられており、
現状では、そのような場合には対側の予防のための治療を検討するということになっています。
家族歴や発症される年齢によっては、やはりリスクが高いと判断されますので、遺伝カウンセリングを受けるという選択肢も出てきます。

今後の方針については、もう一度腫瘍内科の先生と治療の有無を含めて経過観察をどのようにしていくのか、
治療については副作用のリスクと得られる効果について、よくお話をされることをお勧めします。

えむさんが、1日でも早く方針に関して納得されて過ごされるようになる事をお祈りしています。
長文になりすみません。

Re:再発した非浸潤性乳がんのホルモン療法について
えむ (海外在住) 2017/10/08
丁寧なご回答をありがとうございました。何度も拝読して頭が整理されてきました。やはり腫瘍内科の先生にもう一度よく伺わなければと思います。


非浸潤性と浸潤性の差は大きいと思っていますし、ガンになった人となっていない人の違いもまた大きいと思っています。しっかり理解したいと思います。頂いたご回答についてもう一つ伺いたいことがございます。

「一般に多くの病変はホルモン受容体陽性であることから、抗ホルモン剤を飲むことで新たな病変が出現する可能性を下げることを期待するもの」
とのことですが、それでは何故、昨年の初発の際に抗ホルモン剤が勧められなかったのでしょうか。

初発の手術後、腫瘍内科の先生は、予防に抗ホルモン剤をと思ったけどトリプルネガティブだから放射線治療の後は経過観察のみ、とおっしゃいました。しかし実際には今年ホルモン陽性のガンが同側にできてしまいました。ホルモン陽性が多いなら、トリプルネガティブでもホルモン療法をしておけば、二回目のガンを予防できたかもしれないということになると思います。


ちなみに、母が乳癌経験者ということもあって勧められて遺伝子検査を受けましたが異常はありませんでした(BRCA1とBRCA2)。私の初発は43歳の時で現在44歳です。

私の場合また乳癌が出来るリスクが高いのは分かります。でも、その確率にはあまり関心はありません。私一人に限って言えば、できるかできないかの二つに一つしかないので、一つ一つのことをきちんと進めて元気になりたいと思っています。しかし子宮体がんは怖いし複数の子宮筋腫もあるし、効果も副作用もリスクも受けるのは私なので、抗ホルモン剤は納得した上で始めたいです。
Re:再発した非浸潤性乳がんのホルモン療法について
田澤(東京都) 2017/10/09
えむさん

こんにちは。
残念ながら、その質問については我々の方から推測だけでお答えすることが難しいです。
これまでの経過や治療方針については、やはり腫瘍内科の先生にお聞きになるのが一番良いことかと思いますし、えむさんが、今回聞いてくださった質問をそのまま聞いてみられるのが良いのかと思います。

腫瘍内科の先生とはじっくりお話しできる感じでしょうか?
もし直接的にそれが難しければ、まずは看護師さんや薬剤師さんなどを介して「この点について納得がいっていない」と相談されてみるのもいいかもしれません。

本当に、えむさんの仰る通りだと感じています。あくまでも、えむさんの、治療です。

忘れないでおいていただきたいなと思うのは、医療従事者はそれを一番望ましい形で進められるようにお手伝いしている存在だということです。
あまりお答えになっていないお返事で申し訳ありません。
Re:再発した非浸潤性乳がんのホルモン療法について
えむ (海外在住) 2017/10/09
早速クリニックに予約を入れました。もう一度私の場合のメリットとデメリットも合わせて腫瘍内科の先生に伺ってこようと思います。

初発で温存した時はまだのんびりした気持ちでいましたが、今は緊張感と不安があるせいか、力が入りすぎていたようです。とにかく手術は無事終わったのだし、今後については慌てずに決めたいと思います。

とても勉強になりました。いろいろと教えてくださってありがとうございました。

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