掲示板「チームオンコロジー」

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治療とその選択
ホルモン療法の乳がんリスクについて
うさぎ(埼玉県) 2022/10/26
乳がんのガイドラインでは、ホルモン補充療法の併用療法では乳がんのリスクが上昇し、エストロゲン単独では低下する、とありましたが、
黄体ホルモン単独の場合はプロゲステロン陽性乳がんのリスクが上昇する、という理解で良いのでしょうか?
ミレーナを検討中ですが、母が乳がんでリスクを心配しています。
治療開始前に遺伝カウンセリングを受けるべきでしょうか?

   
Re:ホルモン療法の乳がんリスクについて
J-TOP 掲示板担当(東京都) 2022/11/02
うさぎさん、ご相談くださりありがとうございます。J-TOPメンバーで話し合った内容をお答えいたします。

まずご心配されていた内容につきましては、うさぎさんのご指摘の通り、プロゲステロン受容体陽性陰性の区別なく、エストロゲン+プロゲステロン併用ホルモン補充療法により乳がんリスクは上昇することは示されています。しかしそのリスクは肥満、アルコール摂取、運動不足といった一般的リスクと比べて高くはないと言われています。
一方で早発閉経(40歳未満で閉経を迎えること)や若年での卵巣摘出後の場合は、骨粗鬆症予防のためにホルモン補充療法は強く推奨されますし、重い更年期障害の場合には数年間のホルモン補充療法導入により生活を送りやすくなることが期待できます。
いずれの場合もエストロゲン+プロゲステロン併用ホルモン補充療法をご提案する際には、1年に1度の乳がん検診を必ず受けて頂くようにお伝えしています。上記乳がんリスクがご不安な場合は、代替案として漢方薬をご提案していますが効果は劣ります。

また、ミレーナは乳がんのみならずプロゲステロン受容体陽性の癌の発がんリスクをわずかに上昇させる一方で子宮体癌のリスクを低下させると言われています。ミレーナ使用前・使用中では婦人科検診・乳がん検診が必要です。

ミレーナにつきましては、月経困難症や避妊目的として使用することが多く、ホルモン補充療法として使用することは一般的ではないと思われます。
今回のご相談からはミレーナをどのような目的で使用されるかはわかりかねましたが、使用することによって得られるメリットと不利益となりうるかもしれないデメリットについて、十分に検討することが必要かと思います。

また、遺伝の検査については、保険でBRCAが測定できるのは既に乳がんになっている人で、45歳以下の発症か、第3度近親者内に乳がん卵巣がんになっている方、2回以上の乳がんになっている方です。

お母さまは上記項目に当てはまることや遺伝検査をこれまでに受けられていましたでしょうか。それによっても判断が変わってくるかもしれません。

ただ、その方のご年齢や月経状況等にもより、ホルモン補充療法やミレーナ使用が必要となる場合もありますので、ご不安な場合は婦人科医に相談されることをお勧めします。

ご質問の内容から、ご自身のお体と向き合い、納得して医療を受けることについて積極的に取り組まれている印象を受けました。
不安があることも含め、ぜひ主治医や周りの医療スタッフにご質問、ご相談ください。

長文となりましたが、うさぎさんの今後のよりよい治療に結びつくよう私たち一同願っております。

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