掲示板「チームオンコロジー」

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治療とその選択
癌細胞の熱による死滅について
ふじさん(福島県) 2020/01/07
乳がんステージ3b、EC療法、アブラキサンでの化学療法が終了し、手術予定の者です。
癌細胞は39度で死滅すると聞きました。
とすると、インフルエンザなどで高熱が出た場合、腫瘍が縮小したり転移の可能性は減るのでしょうか。
また、乳がんには温熱療法は効きにくいと主治医からききました。その理由について、科学的にどのような原理なのかお伺い出来ないでしょうか。
よろしくお願いいたします。

Re:癌細胞の熱による死滅について
SS(福島県) 2020/01/16
ふじさん様

看護師をしております。

まず、<がん細胞と熱の関係について>お答えできることをお伝えします。
がん組織は、正常な組織と比べると、熱に弱いのは証明されています。
では、その熱は何度以上なのか?ということになります。
がん組織は、【42.5度】以上の熱で死滅すると言われています。
温熱療法は、「がん細胞のある箇所」を「高周波エネルギー」を使って温めてがん細胞を死滅させることを狙った治療方法です。
ここでひとつ疑問が残ります。正常細胞もまた、42.5度の熱を与えられたらダメージを受けるのではないか?ということです。
正常組織は、温められると血管を広げて血流量を増やします。
すると、その血液が熱を運び去る役目を担ってくれます。
がん組織の中にある血管は、温められても広がりにくいので、熱が留まってしまい、結果死滅するとされているのです。
しかし、がん細胞も黙って死滅することはしません。熱で変性したタンパク質を使ってなんとかして修復しようとします。
一度の温熱治療では効果が難しいのと、温熱治療だけでは有効性があまり得られないのはそこにあります。
ですので、温熱治療単独で行うのではなく、放射線治療や化学療法と組み合わせて行うことが多いです。

インフルエンザなどの感染症による発熱では、がんの縮小は期待できません。

温熱療法は、がん組織の温度を上げる治療法です。
そのため、温度を上げやすい浅い位置にあるがんに有効と言われています。
深い位置に存在する腫瘍は、十分に加温することが難しいため、体への負担が大きいと言われています。

乳がんに効きにくい、という主治医の先生のお話ですが、もしかしたら熱を加えにくい場所に病気の場所があるのかなと思いました。
Re:癌細胞の熱による死滅について
K(静岡県) 2020/01/16
ふじさん様
こんにちは。放射線科医のKと申します。手術を控えた大変な時期に掲示板にご相談いただきありがとうございます。SS様も温熱療法に関するとても詳しいコメントをありがとうございます。

温熱療法の立ち位置の観点から追加でコメントさせていただきますと,温熱療法は,単独で行うのではなく,放射線や抗がん薬の効果を強めることを目的にこれらと併用して行うものですが,温熱療法を追加することで治療効果が上がるかどうかは研究段階であり,現在乳がんの標準治療ではありません。効果や安全性が科学的に証明されておらず,健康保険で認められていない医療を「補完代替医療」と呼びますが,温熱療法も通常医療の範囲ではないため,補完代替医療に含まれます。日本乳癌学会の「患者さんのための乳癌診療ガイドライン」(これは乳がん患者さんやご家族が正しい情報を得られることを目的として,専門の医師,看護師,薬剤師,患者さんによって作成されたものです)に,補完代替医療についても記載されていますので,下記のリンクも参考にされてください。
http://jbcs.gr.jp/guidline/p2019/guidline/g8/q60/

また,インフルエンザなどの発熱時に,腫瘍縮小や転移の可能性を減少する効果があるかどうかも証明されてはいません。SS様のコメントにあるように,あまり期待はできないでしょう。

いずれにしても,化学療法が終わって手術前後の大事な時期ですので,まずは現在の治療や,体調を整えることに専念すべきだと思います。そのために,今回ふじさん様が掲示板に書かれた疑問や,その他治療に関する不明な点についても,ぜひ,通われている病院の医療スタッフに相談していただければと思います。医師には言いにくいことがあるかもしれませんが,看護師,薬剤師など医療スタッフや,もし病院にあれば「患者相談支援室」などに,疑問に思うことは気軽に相談し,できるだけスッキリして治療を続けることをおすすめします。
ふじさん様の手術が無事に終了してその後の治療に前向きに取り組むことができることを,心よりお祈りしております。不安なことや困ったことがありましたら,またいつでもこの掲示板をご利用ください。

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