コラム/エッセイ

ヤングオンコロジースペシャリストの声

Essay: Voice of Young Specialists

夢 ~薬剤師として、そしてCRCとして~

薬剤師_中野理恵.jpg
中野 理恵 Rie Nakano
CRC薬剤師
国立がん研究センター中央病院 治験管理
国立がん研究センター中央病院でCRCをしています。臨床研究を円滑に進めるために、日々の業務に邁進中です。また、“エビデンスを作る”側として、倫理やGCPと共に何を身につけ、学ぶべきかを考えています。

エッセイ執筆は初の経験であり、迷いもありましたが、若い仲間の夢を膨らませるきっかけになればと思い受けさせて頂きました。貴重な機会をありがとうございます。

私は薬剤師ですが、Clinical Research coordinator(CRC)という、学生時代から興味はありましたが、働く当時まで業務内容が謎であった業務に就いています。

医療職は国家試験合格後も進むべき道で迷うこともあると思います。好きな分野、夢、恩師の助言を道標に私が歩んできた道とこれから進みたい道について書かせて頂こうと思います。

学生時代の夢

薬学を選択した理由は好きな化学で人の役に立つ仕事に就きたいと考えたからです。新薬開発に興味がありましたが、有機/分析化学が苦手で、人が好きで開発に携われる仕事!と思い、就職活動は医薬品開発業務受託機関を受けました。結果は惨敗で、研究室の先生と相談し、大学院へ進みました。1.5年の病院研修でチーム医療における薬剤師の役割、EBM、それらの楽しさを学びました。

病院薬剤師時代

病院研修で学んだ『薬物の適正使用ができる薬剤師』を目指しながら日々の業務に邁進していました。ただ、薬歴を残しながら、“医師が選択した治療法を支える為に、薬剤師は薬を扱う科学者としてどんな視点が必要なのか”、と考える時代でした。病棟看護師さんとも楽しく業務をしていましたが、ある日、学会で久しぶりに恩師の話を聴講し、新薬開発に関わりたいという目標に戻ろうと決心しました。

現在 CRCへ

改めてCRCになりたいと考えた理由は、“EBMを作る側になりたい”と考えたからです。今度はCRCとして、プロトコールから背景・目的、方法を読み、承認申請に必要なデータを収集する業務のサポートをしています。病院薬剤師として論文の対象患者さんが自分の患者さんに当てはまるか確認するのと逆作業です。

病院薬剤師と違う点は、『目の前の患者さんの安全性と共に、治験薬の評価全体に影響する』という点で、安全性や倫理性と公平性を確保する必要があり、GCP等の法律、IC手順、治験の相による違い、DLT評価方法など、学ぶべき知識や習得すべき技術が次々に浮上します。今はその一つ一つ磨き、CRCとしての必要最低限の物を身につけるために日々奮闘しています。

CRC業務の楽しさは患者さん、医師、製薬企業、看護師等との間に架け橋を作ることであり、新薬を世の中に送り出すチームをつなぐ “架け橋建設係” の大切な役割を感じるからです。この橋は、過去、現在、未来と治療法の歴史を繋ぐ架け橋でもあり、誇りを持てる仕事です。

これから…

2012年に開催された『The 1st Team Oncology Leadership Academy』でmissionとvision、多職種チームにおけるリーダーシップ・・・、驚きと新しい視点を学びました。正確には“学ぶ”というより“覗かせて頂いた”レベルです。“病棟医療”、“地域医療”、“新治療法を確立する医療”等、どの医療チームも、医師、看護師、薬剤師、コメディカルが異なる専門知識を生かすことで質の向上が期待できます。

私の見ているVisionは『薬物動態や薬力学の情報を、現場で働く医師、薬剤師に渡し、病棟や地域医療の中で薬物の適正使用に役立ててもらうこと』です。そういう架け橋を作れるCRCになりたいと思います。

(2014年 5月執筆)

ちょこっと写真、ちょこっとコメント

先日、ポーランドに行く機会がありました。町の至る所に色とりどりのお花屋さんが並んでおり、見とれてしまうばかりです。どのお店にも写真右下のようなドライフラワーがあり、帰国後に調べてみました。

Palma wielkanocnaというもので、復活祭1週前の日曜に教会に持って行き祝福を受けるそうです。
仏教では4月8日に花祭りがあり、いつの時代のどこの世界の人も春に命のワクワクを感じるのだな、と嬉しく感じた発見でした。

(2014年 5月執筆)

#