コラム/エッセイ

患者さんの満足度を高めるがん医療の新たなアプローチ
“チームオンコロジー”

TeamOncology ABC

Vol.05

適切な質問をする ― 腫瘍医と効果的な面談をするために

患者として、あなたは医師にどんな質問でもする権利があります。その意味では、間違った質問というものはありません。

しかし質問によっては、医師とより実りある対話をすることができます。これは腫瘍医として、そして、がんサバイバーとして、私自身の経験からの助言です。

質問をする前に、相手が人間であることを思い出しましょう。医師は神でも聖人でもありません。医師はプロフェッショナルであろうとしますが、感じのよい人の方が相手にしやすいものです。

自分の怒りを隠す必要はありません。しかし建設的な批判を伴わない怒りだけでは、患者と医師との関係を悪化させる結果になります。

次に、医師の時間は限られていることを理解して下さい。医師も患者が必要とするだけの時間や注意を払いたいと思っていますが、現実には一人の患者に使える時間は限られています。多くの場合、医師は最も重篤な状況にある患者のニーズを優先して、時間配分しなければなりません。

このためタイミングよく、よく考えられた質問は大きな違いを生みます。質問をする前に次のことをしてみて下さい。

  1. 質問をするのによいタイミングか尋ねる。良いタイミングでなければ、いつならよいか聞く。医師はこうした配慮に感謝します。
  2. 事前に質問事項をまとめておく。

質問する際に、コミュニケーションを良くするヒント

1.「おっしゃることが、わかりません」

理解できない場合は、そう言ってください。わからないのに、頷くのはダメです。頷きつづけると、医師は理解しているものと思い、話し続けてしまいます。

2.「普通の言葉で、説明していただけますか」

医師は気をつけていても、つい専門用語を使ってしまいがちです。もしわからない言葉があれば、説明を求めて下さい。逆にあまりに簡単なようであれば、より詳細な説明を求めて下さい。

3.「私はXという風に理解しましたが、私の理解は正しいですか」

自分の理解を確認するために、聞いたことを言い直してみるのは重要です。「Xということで同意して、つぎにY、そしてZですね?」 面談の最後に、こうした確認をとるのは良いことです。

コミュニケーションに役立たない質問や発言

1.「私は死ぬんでしょうか?」

誰にもわからないことです。つい聞きたくなってしまいますが、代わりに症状や病気がどれくらいの期間続くのか、腫瘍がいつ頃小さくなるのか、いつ自宅や仕事に戻れるのかといった質問をしてみましょう。医師は普通、全般的な結果は予測できないものですが、こうしたより明確な側面については、推定できるかもしれません。

2.「これが先生の妻、あるいは夫だったら、どうしますか?」

その医師の価値観を十分に知りつくしていない限り、あとであなたが後悔するような方向に導かれてしまう可能性があります。

3.「臨床試験や化学療法は(絶対に)イヤです」

口に出す前に注意しましょう。医師がその断固とした言葉を覚えていて、将来的に二度と提案しないかもしれません。もし気持ちが変わったら、医師に伝えましょう。医師は患者の発言に対し、患者が思うより大きな影響を受けているものです。

4.建設的な批判ではなく、他の医師の悪口を言う

医師はどう反応してよいかわかりませんし、結果が悪ければ自分も同じように悪く言われるのだろうかと考えてしまいます。建設的な批判は役に立つものですが、単に強い感情を示すのは有益ではありません。

5.「聞くべきことがわかりません」あるいは質問をしない

これは今起きていることに、興味がないと言っているようなものです。患者に何と言って良いかわからないと言われると、医師側もどこから手をつけて良いかわかりません。本当に質問がないなら、少なくとも状況や治療計画は十分に理解したと伝えてください。もし何を聞いてよいかわからない場合、次のような質問を考えてみて下さい。

  • 治療計画の次のステップについて、書いていただけますか?
  • なぜ、こうした検査をするのですか?
  • なぜ、私はこの治療を受けるのですか?
  • この薬の副作用は何ですか?
  • この治療にはどの程度の効果が期待できますか?
  • この治療で何が改善するのか、説明して下さい。
  • なぜこの治療が、私に最適だと思われるのですか?

質問は、患者としてのあなたが治療やケアの質を上げ、不適切なケアから自分を守るために行うべき重要な手段の一つです。私は患者と医師間のコミュニケーションを非常に重要だと考えています。

(原文は英語。日本語翻訳版(海外癌医療情報リファレンス)より転載:片瀬ケイ訳)

上野 直人
上野 直人
1964年生まれ、テキサス大学MDアンダーソンがんセンター教授。腫瘍分子細胞学博士。専門は、乳がん、卵巣がん、骨髄移植、遺伝子治療。
J-TOPの創設者であり、ライフワークとして、がんの治療効果を最大にするためのチーム医療の推進に力をいれている。