コラム/エッセイ
チームオンコロジーへの道
Essay: Road to TeamOncology
あなたのVisionとMissionは何ですか?
大里 洋一 Yoichi Osato
薬剤師
国立病院機構東京医療センター National Hospital Organization Tokyo Medical Center
1. VisionとMissionを創ることの重要性
「自分自身のVisionとMissionを創ること」が非常に重要です。魅力あるVisionとMissionをみなで共有し、それぞれの専門性を認め合い、チームを創っていくことが大切です。
2008年にMDアンダーソンがんセンターで行ったJapanese Medical Exchange Program(JME)での研修は、単にチーム医療のノウハウを学ぶだけではなく、人生において重要ないくつもの要素を教えてもらった気がします。その中の一つに「VisionとMissionを創ること」がありました。当時、自分のVisionとMissionを考えてみたこともなく、とりあえず創ってはみたもののしっくりこなかった思いがあります。
例えば、「○○専門薬剤師になること?」「○○部長になること?」。Visionは、決してポジションを得ることではないとは聞いていたのですが、胸をはって言えるだけのものは見つかりませんでした。以来、帰国してからもVision とMissionを考え続けていたのですが、最近ようやく一つのものに辿りつきました。
2. 私のVision
私のVisionは、『薬学的な知識と技術と情熱で人々に夢と希望を与える世界一ファンタスティックな薬剤師になる』ことです。
薬剤師は薬剤のプロフェッショナルです。しかし、個人的には、それ故に、少し小難しく付き合いにくい印象を持たれているような気がしていました。また同時に、世間の病院薬剤師に対する認知度も低いと感じています。特に、がん関係の仕事をしている薬剤師の役割は年々その重要性を増しており、チーム医療では欠かせない存在だと自負していますが、その仕事に接する機会がある方は本当に限られています。
私は、薬剤師という立場で患者さんに希望を与えたい。そして同じ薬剤師の皆さんの努力が世間に認められ、薬剤師が夢を持てるようにしたい。さらに、これから新しく医療者となる学生さんを含めて多くの方に、薬学的な知識と技術と情熱で、夢と希望を与えられる人になりたいと思うようになりました。そして、小難しい話をするのではなく、どちらかというとファンタスティックな話のできる人になれたら良いなと思うようになったのです。
3. 私のMission
私のMissionは、『自分に関係する全ての人の才能を開花させる』ことです。
Vision到達のために何をすればよいか?人々に夢と希望を与えるにはどうしたらよいか?自分だったらどうされたら嬉しいか?
行き着いた答えは、「自分にしかない才能」が発揮できたら楽しい人生が送れるだろうなということでした。もしも、私にそのお手伝いをさせてもらえるチャンスがあったら素敵だろうな…。こうして、私のMissionができたのです。
4. VisionとMissionを創ったことで変わったこと
Visionを創ると物事の見方が変わってきました。そして、Missionは行動を変えました。
(1)臨床現場での仕事
私の1日の仕事の大半は病棟で過ごします。患者さんと接することはもちろん、医師、看護師、薬剤師その他多くの医療スタッフと共に行動します。Missionを創ってから、一緒に働いているスタッフの皆さんの良いところを探している自分がいました。才能探しです。しかしこれは逆に、皆さんから多くのことを学ばせて頂くことになっています。
(2)薬学生への支援
大学病院という場所柄、多くの学生さんが研修や実習に来られます。Missionが出来てから、「薬剤師の可能性をもっと伝えたい」と思うようになりました。そこで、ファンタスティックな講義を行うため、J-TOP(Japan TeamOncology Program)が提唱するチーム医療をドラマ化して動画で授業を行っています。これはなかなかの好評を得ています。いつか彼らの才能が開花するきっかけになれたら良いと思っています。
(3)新たな治療への可能性を目指して
私は現在、医学部の社会人大学院に所属しており、仕事の合間に白血病に関する基礎研究をさせて頂いております。もしかしたら、私たちの研究が病で悩んでいる患者さんに夢と希望を与えることになれるかもしれません。そう思うと、忙しい日々ではありますが、毎日が充実して楽しいのです。
まだまだ、未熟な私ではありますが、VisionとMissionを胸に、これからもファンタスティックな薬剤師を目指して頑張っていきたいと思います。
(2011年 2月執筆)
J-TOPが考える「チーム医療」をどうやったらうまく伝えられるかを最近よく考えます。
- 言葉で言って伝える。
- 文字にして伝える。
- 写真にして伝える。
- 動画にして伝える。
動いているものを動いているまま伝える動画は伝える手段としてとても効果的だと思います。そこで、揃えたのが写真のようなIT機器です。楽しくて役に立つ動画を作りたいと思っています。もちろん、伝え方の中で、「体験」してもらうのが一番であることは言うまでもありませんが。
(2011年 2月執筆)