患者満足度の向上を目指して
橋本 浩伸
Hironobu Hashimoto
薬剤師
国立がんセンター中央病院 薬剤部
National Cancer Center Hospital
最近では「チーム医療」というキーワードが日本の中にも浸透しつつあると思います。そのキーワードによって実際行われる医療の形態は多岐にわたり、このチームオンコロジー.Comで紹介される「がんのチーム医療」もその一つのモデルだと思います。私は、2007年11月にThe 1st TeamOncology Workshopに参加し、2008年にJapanese Medical Exchange (JME) Programで米国MD Anderson Cancer Center(MDACC)を研修する機会を得ました。
Workshop、JMEでは、日常業務から離れ「チーム医療」について考え、話し合い、思い出も多く、とても貴重な機会でした。しかし、Workshop、JMEが終了し日常の業務に戻った時に感じたことは、「チーム医療」を実践するためには何をすれば良いのだろうか?ということでした。
ここでは、Workshop、JME参加からわずかの期間ではありますが、「チーム医療」実践のための試行錯誤をご紹介したいと思います。
1. チーム医療の目標
これは、このプログラムでも紹介されているので多くを説明する必要はないと思いますが、「チーム医療」の目標は「患者満足度の向上」にあります。そのために各医療職が専門的意見を基に議論し、そこで得られたコンセンサスに基づき協働することが必要です。そのためには各職種が平等な関係であり、その関係を作るために各職種もしくは個人がコミュニケーションやエビデンス、リーダーシップといったスキルを身につける必要があります。これを実臨床で実践するのは個人の努力だけでは成しえないと考えています。
2. チーム医療を広める
私がこのWorkshopを知ったのは、同じ職場で過去のWorkshopに参加した方の話を聞く機会があったからです。ですので、私がWorkshop やJMEで学んだことを次に繋げていかなくてはと考えました。まずは、広く知ってもらうためには講演会を企画しました。一緒にJMEに参加した仲間とJ-TOPのメンターの協力を得て、院内外で講演会を行いました。そのインパクトはとても大きなものでしたが、1回の講演会でモチベーションを維持することは難しく、持続力が問題とわかりました。
次に、同じ経験をしたうえで「チーム医療」を考える仲間を作るべく、Workshopへ参加するチーム作りのお手伝いをすることを考えました。「チーム医療」に興味がある人を探しWorkshopに参加してもらうのです。興味がある人を探すうえでは、先に述べた講演会の企画がチームオンコロジーの情報を得る上では何らかの効果があったと感じています。 現在少しずつではありますが、仲間が増えているところです。
3. 院内のチーム医療について話し合う場を作る
Workshopの参加者が周りに増えつつある中で問題となるのは、やはり持続力です。WorkshopやJMEは、個人の経験においては非常に影響力が大きいイベントではありますが、そこで得られたモチベーションは放っておけばいずれ萎えてしまいます。それを維持するために必要と考えたのは、「話し合う場」を作ることでした。
「チーム医療」に興味があるWorkshopへの参加者を中心にメールでの意見交換と不定期ながら1~2時間お茶をのみながら「チーム医療」について話し合う場を作り、「ザ・チーム医療」と名付けました。
4. 目標を設定する -「ザ・チーム医療」のVisionとMission
「ザ・チーム医療」を運営するためには目標が必要です。もちろん「チーム医療」の目標である「患者満足度の向上」が目標となるのですが、それを先導する集団としての目標が必要だと考え、参加者でVisionとMissionを考えました。
【Vision】
医療者の満足度を高めることで患者満足度向上につながるチーム医療を実践する
【Mission】
チーム医療にかかわる教育機会を提供することで多職種との連携・チーム医療を広く進める
私個人は、まだまだ直接患者さんの満足度向上につながる取り組みが出来ているとは言い難いのですが、この試行錯誤がいつか実を結ぶ日が来ると信じて続けて行きたいと思います。
(2011年 6月執筆)
ちょこっと写真、ちょこっとコメントMy interest at a glance:
私の趣味は千葉県浦安市にある某「夢と魔法の王国」に行くことです。お好きな方からすれば大したことはないと思いますが、年4回位は訪れます。(ここ1ー2年は1ー2回と減ってしまっているのが寂しいところですが…)
晴れでも雨でも、暑くても、寒くてもいろいろな楽しみ方が出来ます。最近も震災時のホスピタリティと危機管理能力について高く評価される報道がありました。
そこで遊んでいるときには一切考えませんが、ときどき病院の運営にも応用できないかと頭をよぎることがあります。これはたぶん私自身が、仕事熱心なのではなく、趣味に熱心なのだと思いますが…。
(2011年 6月執筆)