コラム/エッセイ

チームオンコロジーへの道

Essay: Road to TeamOncology

留学 転落 復活 再生

看護師:古屋由加

古屋 由加 Yuka Furuya

看護師

広島大学病院 総合医療研究推進センター Hiroshima University Hospital/Center for Integrated Research

1. Team2006 誕生

2006年MD Anderson Cancer Center(以下MDACC)留学。
今でも昨日のことのように語れる。MDACCでの全てのシーンは新鮮かつ強烈。時にちょっぴりしんどくて、でも本当に有意義で貴重な時間だった。そして、大切な仲間(村上先生、中嶋先生、佐藤由美子さん、吉澤さん、高木さん)にめぐり逢えた。

きっかけは、村上先生が私にかけた一声。「古屋君、僕と一緒にHoustonに行かない?」一瞬ナンパかと。だが、ここから全てが始まった。村上先生には本当に感謝している。

研修は私達が希望した内容をMDACCのメンターが全て盛り込み組まれた超タイトスケジュール。途中自滅しそうな危機もあったが、どうやらTeam2006は「どMの集まり」と気づき、乗り越えてしまった。結果なんでも語り合える仲間となった。腹を割って話せる場。それがTeam2006である。

2. Team2006 帰国

どMでも、根は真面目なTeam2006。
MDACCと自施設の現状とのギャップ。何から実践し、どう浸透させていくのか。
「帰ってからどうする?」
しかし、Team2006は誰か壁にぶち当たると、必ず別のメンバーが前に転がす発信をくれる。

あの時も中嶋先生が「日本だって負けてない!」といい、みんなで「うん!」と答えて帰国。佐藤由美子さんが立ち上げたメーリングリスト「We love team2006」でのやりとりの過程で、Team2006に「雑草根性」と「みんな違って、みんないい」という共通認識が生まれた。

3. CRCのあり方をめぐる野望

留学前、私は院内最初の治験コーディネーター(CRC:当時2名)として臨床研究部の立ち上げからCRC業務と他部門との連携を確立。スタッフも増え、組織も拡大する中、「CRCのあり方」について模索していた。

CRCは「医師のお手伝い」ではなく、治験に関する多岐にわたる問題をCommunication・Presentation・Negotiation SkillでクリアするSpecialistであり、Evidenceの洗練に不可欠な存在だと考えていた。共にCRCとして成長を続ける仲間と、Next stage CRCを目指し一皮むけたい。そんな野望が生まれた頃、MDACCに留学する機会を得た。

4. 留学を経て創出したMission & Vision

【Mission】
看護師・医師・薬剤師(最小ユニット)で被験者中心の治験チーム医療を実践するモデルスタイルを築く。

【Vision】
CRCの活動する姿が周囲に「CRCって楽しそう」と映り、治験に興味を持ってもらえるようにする。

留学後、多部門での報告会、勉強会、ポスター発表等で留学経験と上記のMisson&Visionを伝え、CRCの認定も取得。これからという時、突然の人事異動が待っていた。

5. 描けないVision、「患者」という経験

看護師が辞めていく崩壊寸前の病棟に、大勢の新人が増員される。副看護師長として病棟業務の改善と新人教育に携わってほしいと看護部長直々の辞令だった。

CRCのキャリアが評価されたからだと頭では理解したが、心はCRCに残ったままの異動だった。現場でのVisionはとても描けず、与えられたMissionに心が動かないまま自分を責め半年が過ぎ、11人の新人は辞めずに自立した。ノルマを達成した頃、不眠、被害妄想、幻覚、幻聴。ついに私の心が壊れた。

まさか自分が鬱病(適応障害)になるとは…。休職し、もう自分は終りだと世の中から消えたくなる半年間を患者として過ごす。 

潰れたのが現場なら、救ったのも現場。スタッフからメールや電話、手紙をもらった。「もったいない、悔しいなら戻って来い」「今は辛い、でも何か意味がある」「わしの治験、手伝ってくれえ」

治験で関わったスタッフが待っていてくれた。復職後もいろんな支えで立ち直ることができた。気が付けば留学後2年が経っていた。

6. そして今、 たくましい仲間達(Next Generation)とともに

私はCRCの存在をすり込もうと、病棟カンファレンス、医局説明会、製薬会社のセミナー等、いろんな場面でcommunicationをとった。

CT・MRI等は事前に確認し、医師と一緒に画面を見て評価する場面を仲間に見せた。検査・治験薬処方オーダーを率先して代行入力することで、医師から得た信頼を裏切らない責任感は仲間にも伝わり、オーダー範囲も拡大。医師とのOverlapは自然と浸透した。

今オーダーのほとんどはCRCに委譲され、「間違いない」と医師のお墨付き。治験スケジュール管理でのLeadershipを発揮している。 2010年でCRC8名全員が認定を取得。治験拠点病院の年間ノルマ30プロトコル契約を目指し、各々が主体的に担当を決め、治験全般におけるCoordinationとLeadershipを発揮している。

平成22年度実施の全国の組織評価で、広島大学病院臨床研究部は第3位の評価を得た。
「私がいなくても、大丈夫」 そんな自信さえ感じられるたくましい仲間達が今日も悪戦苦闘している。

(2011年 7月執筆)

ちょこっと写真、ちょこっとコメントMy interest at a glance:

「実家にいる2匹のチワワ(Nao&Chika)」

どんなテンションの私でも、帰省すると「おかえり!」と迎えてくれる。
NaoはサツマイモをGetすると、がんとして離さない。いつもは目がないバナナにも釣られない(写真上段)。
Chikaはお散歩でくたくた。気が付けばビーンズクッションで呆れる寝相(写真下段)。
朝5:30にはこの子達の肉球パンチで起こされる。
いつも自由奔放なこの子達だけど、
元気がない私には、どこか体をくっつけて居眠りをする。
天然なのか、計算なのか、私が親バカなのか、
ここぞという時、私が勝手に癒やされている天才達。
このうらやましい程の自由気ままな存在に、
ふと会いたくなって、
ついつい車を飛ばして実家に帰る。

(2011年 7月執筆)

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