コラム/エッセイ

チームオンコロジーへの道

Essay: Road to TeamOncology

職種の殻を打ち破り、共有することの大切さを知って

薬剤師:石塚雅子

石塚 雅子 Masako Ishizuka

薬剤師

名古屋大学医学部附属病院薬剤部 Nagoya University Hospital

最近、チーム医療への関心が高まり、当院でも多くの試みが行われています。私は、以前からがんのチーム医療に興味があり、様々な機会を見つけて勉強を続けてきました。その一環として、2009年にJapanese Medical Exchange (JME) Programに参加し、米国MD Anderson Cancer Center(MDACC)で研修する機会を得ました。

JMEでは、常に医師と看護師と行動を共にし、チーム医療について深く考えさせられました。研修期間は5週間と短いものでしたが、大きな影響を受けました。その一部をここにご紹介したいと思います。

1. 意識の改革 ―他職種のことを知る―

自施設においても数年前からカンファレンスに参加していましたが、JMEに参加する前は薬物治療以外にはあまり興味を持たずに日々を過ごしていました。しかし、JMEで、医師、看護師と一緒に研修プログラムを受ける中で、他職種の仕事や目の前の患者さんが全職種からトータルとしてどのような医療を受けているのかを、自分がいかに理解していないかに気付かされました。薬剤師にも他職種との関わりがあり、治療の全体像を把握してこその薬剤師の位置づけがあることを感じました。

帰国後は、まず、周りのスタッフに仕事内容を聞くことから始めました。患者さんのために何かをしようとする際、自分の役割を果たすことばかり考えていると、他職種に対して守りの姿勢になったり、反対に攻撃的な姿勢になったりしやすいものですが、他職種のスタッフが一日何をして過ごしているのか、患者さんに対してどのように考え、その患者さんにどのように関わってきたのかを聞くことで、これらの問題が少し解決できた気がします。

また、カンファレンスにおいても、薬物治療以外の治療プランを積極的に聞くことにしました。すると、他の医療スタッフが何を大切にして治療に取り組んでいるのか、患者さんが医療チームに対してどう思っているのか、以前より分かるようになりました。

2. 多職種でエビデンスの創出をする

今までは薬剤師のメンバーで、薬剤師中心の場(学会、雑誌)へ自己表現の場を求めてきました。しかし、帰国後、チームメンバーと深く関わったことにより、ひょんなことから多職種と合同で研究発表し、論文化する流れができました。他のチームメンバーも多職種合同で研究発表する予定です。

個々の患者さんに対して、一生懸命皆で考え、取り組むことも大切ですが、皆で複数の患者さんのデータを振り返り、チームメンバーが普段感じていることを深く聞き、まとめることも大切です。同じデータを見ても職種によって視点や見解が異なるため、多職種が意見を出し合い交換することにより、偏りのない見解が得られ、臨床現場で実現性の高い答えを出すことができます。また、自分(薬剤師)の世界における発表にとどまらず、チームメンバーが共通の理解を得ることもできます。この過程は、まさにJMEで学んだチーム医療のエッセンスであり、今後のチームおよび自分自身の方向性を見直す大きなきっかけとなりました。

私は今、次の二つのことを大切にしています。一つは、他職種の人と良く話し合い、自分と薬物治療と患者さんというまとまりではなく、チームと医療全体と患者さんというまとまりで理解すること。もう一つは、多職種で見解を出し、多職種に向かって公表することです。まだ駆け出しですが、多職種なら大きなものを生み出すことができそうだなと、チームの力の可能性を楽しんでいます。

(2010年11月執筆)

ちょこっと写真、ちょこっとコメントMy interest at a glance:

私は2年半ほどフラワーアレンジメントを習っています。フラワーアレンジメントでは、答えはなく、その日の花や木の特性を生かして作品を作ります。

曲がっているのも個性、まっすぐなのも個性。個性があるから面白い。教室で同じ種類のお花を使っても、出来上がる作品にバリエーションがあることが楽しいです。そして、作品を家に飾っておくと、仕事から帰宅後に心が和みます。

(2010年11月執筆)

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