コラム/エッセイ
チームオンコロジーへの道
Essay: Road to TeamOncology
点をつなぐ Connecting the Dots
上田 宏 Hiroshi Ueda
薬剤師
市立伊丹病院 Itami City Hospital
ある患者さんとの会話
「薬剤師さん、久しぶり」
1か月前、当院での治療中に家族の強い希望で、有名な○○病院に転院したはずの患者さん。
病室のベッドから、こちらに向かって手をふっている。
「あれ?どうされたんですか?」
「○○病院になじめなくてね。戻ってきちゃったよ。なんか大量生産のベルトコンベアーにのせられているみたいでね。やっぱりこっちの病院がいいわ」
○○病院の△△先生、きっと怒っているだろうな~と思いながらも、少し嬉しい気持ちになる。
「本当に?また病院を浮気しませんか?」
「勘弁して。これっきりにするから(笑)」
治療の内容は、どちらの病院もほぼ同じであろう。
しかし、がん医療の場合、患者さんは治療以外の何かを、主治医や医療者に求めているといつも感じる。
点をつなぐ
この「点をつなぐ」という言葉は、iPadやiPhoneで有名なアップル社を設立したスティーブ・ジョブズ氏の言葉である。彼は大学で文字芸術の授業に感銘を受け、その美しい文字の技術をコンピュータ開発に活かして成功をおさめた。この文字芸術という「点」との偶然の出会いが、彼の人生をつないでいく。
きっと多くの人が、自分の人生を振り返った時、点と点を結ぶ人生の軌跡を描くことができるであろう。私自身にも、幸せな点や苦い点をつなぐ曲がりくねった軌跡がある。幸せな点を予測できればよいのだが、多くの場合は過ぎた後になって点の存在に気づく。
では医療者と患者の出会いはどうだろう?
私たちは、日々、数多くの患者さんに出会う。医療者にとっては日常的なことであるが、がんを宣告された患者さんにとって、この出会いはとても大きな点であろう。患者さんやご家族の方にとって、この点を大切な出会いと感じていただけるかどうか。そこにチーム医療の本質があるような気がする。
私が勤務する病院のがん薬剤師チームのビジョンは、「患者さんが満足できる、最高のチーム医療を提供すること。そしてがん医療における臨床薬剤師の役割を確立すること」としている。一人でも多くの患者さんと出会い、そしてお互いの点をつないでいきたいと考えている。
「また来週から治療が始まるけど、がんばりましょうね」
「ありがとう。よろしく頼みます」
また一つ、大切な点に出会った気がする。
(2012年 2月執筆)
「リーダーシップ」
一人のリーダーが社会を動かす驚異の映像があります。
わずか3分のプレゼンテーションですが、リーダーシップの真髄を見ました。
下のリンクをクリックして、その映像をぜひ見てください。
■ デレク・シヴァーズ 「社会運動はどうやって起こすか」 ◇ Video on TED.com
(2012年 2月執筆)