コラム/エッセイ

チームオンコロジーへの道

Essay: Road to TeamOncology

チームオンコロジー雑感

医師:佐々木英二

佐々木 英二 Eiji Sasaki

医師

名城病院 Meijo Hospital

早いものでチームオンコロジーのチューターとして、癌診療におけるチーム医療に関わるようになって、約5年が経ちました。日本の癌診療はこの5年でだいぶ変わったかな(もちろん良い方向に向かって)と感じていますが、一方でまだまだ道半ばだな、とも思っています。自分なりにこれまでの道のりを振り返ってみたいと思います。

Educational Seminar 2006

「こういうセミナー(Educational Seminar 2006)があるから応募してみない?」と、当時の勤務先の上司からかけられた一言が、自分がチームオンコロジーに関わるようになったきっかけでした。医師、看護師、薬剤師3職種1セットで参加すること、アメリカの有名ながんセンターの先生方が講師であること、公用語が英語であることなどの事前情報はありましたが、他に似たようなセミナーなどの参加経験もなく、いったいどんな会なのだろうと、不安と好奇心を持って参加しました。

いざ、参加してみると、初めて聞く内容ばかりでとても新鮮に感じました。とりわけ、患者さんにとって本当に満足度の高い質の高い医療を提供するためにはチームアプローチが必須であること、そして、チーム医療実行のためには「EBM」、「リーダーシップ」、「コミュニケーション」の3要素が重要であること、という2点は強く印象に残りました。

EBMが重要であるというのは、医師である以上、このとき既に認識していたつもりですが、リーダーシップとコミュニケーションについてはそれまで全く考えたこともなく、目から鱗が落ちる思いでした。また、この時のグループワークの楽しさ、眠さ、充実感は未だに忘れられません。

Japanese Medical Exchange (JME) Program 2007

上記セミナー参加後、幸運にもMDアンダーソンがんセンターでの研修メンバー(JME 2007)に選んでいただき、MDアンダーソンのチーム医療について学んできました。MDアンダーソンには癌診療に必要な思いつくかぎりのものはすべて潤沢にそろっていて、それらがうまく連携して機能していました。ただ、それをそのまま自施設にあてはめることはなかなか難しく、どのようにして取り入れていくか、ということが研修後の課題となりました。

出会うスタッフの方々は職種に関わらず、いきいきと楽しそうに仕事をしているところが印象的でした。自分の職務や講義内容、あるいは私たちの質問に対して話しだすと止まらないスタッフの方も多くいました。それだけ、自分の職務と専門性を理解し、知識や技術に対して自信と誇りを持っておられるのだと感じました。

研修期間中は同期留学の6人でいろいろなことを話し合いましたが、その話し合いの中でこれまで自分は他職種のことを全然理解していなかったということに気づきました。チームメンバー同士、誰がどういうことが得意なのかがわかればわかるほど、チーム医療のレベルアップ、スピードアップにつながります。研修後は他職種の意見、専門性、また社会的な動きにも関心を持つように努めています。

この研修期間中、研修後も今に至るまで、繰り返し、自分のMissionとVisionは何なのか自らに問いかけられるようになりました。そして、それらは今も悩んでいる課題です。

みんなで学ぼうチームオンコロジー

「みんなで学ぼうチームオンコロジー」略して「みん学」には、2007年の第3回からチューターとして参加するようになりました。2012年1月に第11回が行われましたが、第6回を除いて毎回出席していました。「わっ、いつのまにか8回も参加していたんだ!」と、今このエッセーを書きながら驚いています。出席回数ばかりのばしていますが、なかなかファシリテートも上手にならないし、チーム医療に対する理解も深まっていかないし、まだまだ他のチューターに追いつけていないなあと反省しています。

これまで参加した8回のみん学のうちの何回かは世話人や準備委員として企画立案準備の段階から携わりました。基本的なところは毎回同じなのですが、各回オリジナルの重点課題というものも設定します。この重点課題を決めることが一番大変なのですが、最初から世話人の中で、「今回はこれをやりたい」と決まったものがあって、すんなり決まることもあります。

課題症例のグループワークは、回を重ねるごとに終わる時間が早くなってきている気がします。会場が閉まる時間にでき上がっているチームというのはさすがにあまり見かけませんが、だいたいあと少しというところまでできていることが最近は多いと思います。時間内になんとか仕上げる、ということはチューターみんながファシリテートの際、最も気をつけている点の一つです。

以前のみん学は準備委員会を1~2回、東京などに集まって行っていましたが、今はもっぱらネットを利用したスカイプ会議です。慣れてくると直接会って会議をするのとそれほど違いはなく不便ではありませんが、途中で眠ってしまっても最後までばれないことがあります。時間と経費の節約に随分貢献しているのではと思います。

以前のみん学には「爆弾落とし」という名物がありました。「ちゃぶ台返し」「獅子の子落とし」といっても良いかもしれません。キモとなるEBMや患者さんの視点などが抜け落ちている場合、たとえ発表締め切り10分前でも私たちチューターは涙をのんで容赦なく愛のムチを振るうのです。爆弾が落ちた瞬間、逆にあたりを一瞬静寂が包みます。お互いがつらい瞬間です。そこから立ち上がることは並大抵ではありませんが、かつての参加者は皆さんこの苦境を乗り越えて発表にたどり着いていました。かつての参加者の皆さん、ごめんなさい。今はこのようなことは一切ありませんので、安心してぜひまた参加をお願いします。

チューターをしていてなんといっても嬉しいのは、みん学や本家のワークショップに繰り返しきてくれる方や施設があったりすることです。なかには「…プロ」とプロの称号までついてしまったリピーターの方までいます。参加された方が他の人に勧めてくれたり、何度でも参加してくれるような会を続けていけたらと思っています。

私のMissionとVision

最後に自分のような者が5年間、チームオンコロジーの活動に参加し続けることができたことに感謝して、今の私のMissionとVisionを記して筆を置きたいと思います。

Mission : 普通のがんを普通に治す。
Vision : 地域の病院で普通にがんの治療ができる。

(2012年 2月執筆)

ちょこっと写真、ちょこっとコメントMy interest at a glance:

1年半前に、今はやりの自転車(ロード)を私も買いましたが、最近はほとんどレースやツーリングには参加しておらず、もっぱら通勤や買い物などの日常の足として乗っています。

購入前は街乗りにロードはどうだろうかと不安もありました。実際、荷物は一切載らない、ズボンの裾、ライト、ヘルメットなどいちいち面倒くさい、止める時にスタンドがない、などの不便はありますが、走り(軽さとスピード)は断然違います。とても満足しています。名古屋の中心部や名古屋駅などはストレスなく往復できます。レトロな風合いが出てくるまで長く乗り続けたいと思っています。

(2012年 2月執筆)

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