コラム/エッセイ

チームオンコロジーへの道

Essay: Road to TeamOncology

チーム医療とワークライフバランス ~キャリアディベロップメントの狭間で思うこと~

医師:杉山直子

杉山 直子 Naoko Sugiyama

医師

ジェノミックヘルス株式会社 Genomic Health KK

私は2007年開催のThe 1st TeamOncology Workshopに参加したことがきっかけで、2008年のJapanese Medical Exchange (JME) Programに参加させていただきました。素晴らしい仲間やメンターの先生方にお会いすることができ、多くを学び、今でも学び続けられることを本当にありがたく思っています。

残念ながら、現在がん医療の最前線にはいないのですが、離れているからこそ考えられることもあるのではと思い、このエッセイを書かせて頂きました。

キャリア中断と救いの一言

参加したJME研修を通じて一番驚いたのは、チーム医療の概念もさることながら、「コミュニケーション」や「リーダーシップ」を、体系化した知識やスキルとして学べる、と知ったことでした。

しかし、知ることと実践することの間には大きな溝があります。この溝を埋めるには、失敗しつつもひたすら実践していくしかないのですが、私にとってそれは遅々としていて、進歩しているという実感がなかなか持てませんでした。さらに、妊娠出産し、臨床の第一線から離れることになりました。チーム医療の推進だけでなく、キャリア形成という点からも、周りで頑張っている仲間から遅れをとってしまう焦りや、もとの仕事を継続できない自分のふがいなさに挫折感を感じていました。

そんな時、MDアンダーソンがんセンターの、あるメンターと話す機会がありました。
「子供に向き合える時というのは限られているのだから、そのためにキャリアを中断することを躊躇する必要はないし、ぜひそれを楽しみなさい。仕事はまたやりたいという気持ちがあればできるわよ。私たちは先日、育児で20年ブランクのあった病理医をファカルティとして採用したばかりなの」

衝撃を受けました。日米の環境の差や、個人の努力があることは言うまでもありませんが、20年のブランクを経てもキャリア形成することはできるのか、と目の覚める思いでした。この一言で、「熱意さえ失わなければ、いつか自分が目指す仕事をする道が開けるかもしれない。今は自分のできることを、精いっぱいすればいいんだ」と思え、気持ちが楽になりました。

ワークライフバランスとチーム医療

かつては仕事一辺倒で、趣味も余暇もない生活を当たり前のように送っていました。しかし、子供ができて仕事ばかりに時間を使うことができなくなった今、100か0かの選択を迫られる働き方に疑問を持つようになりました。臨床から一歩退いて、子育てしつつ思うことの一つに「ワークライフバランス」があります。最近医療者の間でもいろいろと話題になるこの言葉、追求していくとチーム医療と共通する部分が多いと思うようになりました。

恥ずかしながら、「ワークライフバランス=ライフを充実させるために少ない仕事量を選択すること」と誤解していましたが、正しくは「ライフを充実させることで、より創造的な発想ができるようになり、それがワークの生産性を上げることにつながる」という意味だそうです。それが発展して、「仕事の成果を上げるために、働き方の柔軟性を追求すること」と解釈されています。また、ワークライフバランスを図るには、努力も必要です。“楽して仕事も家庭もハッピー”にはなれない現実を、改めて認識しています。

ワークライフバランスは、医療/ビジネスいずれにおいても女性の活用、特に子育てと仕事の両立と共に語られます。しかし最近は男性も育児に参加したいという話を普通に聞きますし、今後は子育てだけでなく、自分の病気や親の介護等によって仕事が制約される人が増えると予想されています。「柔軟な働き方」は、子供を持つ女性だけではなく、子供のいない女性や男性にも求められる、そういう時代になってきたと実感しています。

制度の面では、時短勤務や育児休暇などがよく取り上げられますが、制度が形骸化せずに多様な働き方をする人たちがお互い気持ち良く仕事を続けるためには、互いを理解し、価値観の違いがあっても尊重し合う気持ちや、対立があってもそれを克服するスキルが必要ですよね。また、どんな働き方をしていても、立場に関わりなく責任をもって仕事をする場面があると思いますし、それがやりがいやキャリア形成につながると思います。

ちょっと飛躍しますが、真のワークライフバランスの実現に必要なのは、「コミュニケーション」や「リーダーシップ」なのではないかな、と思ったりします。そして、これらはよいチーム医療を行う上で必須のスキルでもあります。

ワークライフバランスを意識することは、よいチームを作ることと同じ。よいチーム医療ができれば、患者さんのためになるだけではなく、ワークライフバランスも推進できる!こんな考え方はいかがでしょうか^^。

これからも熱意を失わず、微力ながらもチーム医療に貢献していきたい、それがワークライフバランスを図り、キャリアをつなぐ原動力になるのではないかなと思っています。

(2012年 3月執筆)

ちょこっと写真、ちょこっとコメントMy interest at a glance:

子供のいない方には大変恐縮なのですが、今のマイブームはやはり子供です。

性格が全く違う凸凹二卵性双生児ですが、親のすることをよく見ていることにいつも驚かされます。

掃除の間ほんの少しその場を離れたら、素早くはたきと掃除機をゲット(写真)。思わず笑ってしまいました。早くほんとにお掃除手伝ってね。

(2012年 3月執筆)

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