コラム/エッセイ

チームオンコロジーへの道

Essay: Road to TeamOncology

自分を見失うことなく、仕事にやりがいを感じて

薬剤師:浦川 龍太

浦川 龍太 Ryuta Urakawa

薬剤師

大阪大学歯学部附属病院 Osaka University Dental Hospital

1.MDAへの留学前 - 自分を見失っていた

私がMDアンダーソンがんセンター(以下MDA)へ留学した当時は、病棟へ服薬指導に行き始めて3、4年がたった頃でした。下にある薬局で調剤をしながら、与えられた時間で病棟にあがって、医師が出した処方の説明を患者にする毎日でした。飽き症な私は、薬剤師の仕事って面白くない、患者のためにできることは他にないのだろうかと思い、自分を見失っていました。

2.MDA留学 - やる気に満ちて帰国

留学中は医師、看護師と3週間を共に過ごし、自分がいかに他職種のことや自分自身のことを理解していなかったかがよくわかりました。特に看護師の田口さんにはありがたいお説教を多々いただき、心の底では泣いていましたが、いま思うととても貴重でありがたいことだったと感謝しています。

MDAでは、どの職員に尋ねても、自分のMissionとVisionを答えることができ、自信と誇りを持って仕事をしていました。また、職員がみな満足感を持ち、生き生きと仕事をしていたことが印象的でした。MDAは規模も設備も人材も桁違いでしたが、チーム医療に関しては、決して日本も自分の施設も負けてないし、きっと自分にも負けないことができるとやる気に満ちて帰国しました。

3.MDA留学後 - 他の職種の方と知識を高めあうことに満足

実際自分の施設に帰ってみてまず痛感したのは、自分の心の弱さでした。他職種に質問や相談をすることは少なく、議論をすることはまれ、忙しい医師には発言すら常に控えている現状がありました。

聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥。医療はグレーゾーンが多いから悩むのはみな一緒、そもそも中心は患者さん…など初めは様々なことを自分に言い聞かせながら積極的に話に入るように頑張りました。それから徐々に職場でのコミュニケーションは円滑に行えるようになり、様々な相談をし、また受けるようになりました。

そして見えてきたのが、自分の無知。今までいかにEvidenceではなくEmotionに基づいていたかがわかりました。現在では飽きるどころか、日々相談窓口となり、無知を補うべく、Evidenceの捜索と、専門家への相談に奔走しています。毎日、医師、看護師、薬剤師、その他の職種の方々と知識を高めあうことに満足感を感じています。

4.私のMissionとVision

MDAでは、大切なことをたくさん学びましたが、自分にとって一番大切なことは、自分を見つめなおすことができるようになったことだと思います。また、留学当初よりも、時が経つにつれて、学んだことの重要性を認識することが多くなりました。

留学後、様々な機会に自分のMissionとVisionを考え、試行錯誤を繰り返しました。しかし、より明確になればなるほど、自分を見失うこともなく、仕事にやりがいを感じるようになりました。

【Mission】
コミュニケーションを通じて、患者の主体性を高めるとともに医療職の専門性を引き出すこと。自分の専門性を向上させ、還元すること。

【Vision】
薬剤師として医療に携わり、ひとりでも多くの人を幸せにする。

(2011年 9月執筆)

ちょこっと写真、ちょこっとコメントMy interest at a glance:

私は小学校4年生の頃からトランペットを吹いています。かれこれ20年以上も吹いていて、人生の2/3を共にしてきました。

トランペットは不思議なもので、上手く吹こうと思うと上手くいかず、過度の緊張や弱気がすぐにミスへとつながります。度胸と精神力が必要な私にはよい鍛錬かも…。

(2011年 9月執筆)

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