コラム/エッセイ

チームオンコロジーへの道

Essay: Road to TeamOncology

「人をみる」ことにやりがいと喜びを感じて
~内視鏡医から腫瘍内科医へ~

医師:豊田昌徳

豊田 昌徳 Masanori Toyoda

医師

神戸大学医学部付属病院 腫瘍・血液内科 Kobe University Hospital

消化器内視鏡の道へ

医師を志すようになってから、漠然と「がん」に関わっていきたいと思っていた。何科を専攻するか悩んでいた時、一人でほとんどの手技が可能であり、早期発見から治療まで行える消化器内視鏡に憧れ、その道に進むことを決心した。

偶然に腫瘍内科の道へ

内視鏡検査に心身ともにどっぷり浸かっていた医師7年目、偶然にも消化器癌の化学療法をさせていただく機会を得ることになったが、当時はこの出会いが自分の人生を大きく変えることになるとは知る由もなく、仕事が増えて忙しくなったなぁくらいにしか思っていなかった。

最初は、新しいことを学ぶ楽しさと興味から化学療法に携わっていたが、がん専門病院での研修や実際に多くの患者さんやご家族を診させていただくうちに、より専門的にがん薬物療法について学びたいと思い、腫瘍内科の門をたたいた。医師12年目の挑戦であった。

チームオンコロジー・ワークショップに参加して

幸いにも上司や同僚にも恵まれ、多くの経験をさせていただく中、Japan TeamOncology Program(J-TOP)が行っている第4回チームオンコロジー・ワークショップに参加した。がんのチーム医療の概念やチーム医療に必要な要素について学び、そこでがん医療への情熱を今まで以上にかきたてられたことは衝撃であった。

ワークショップ参加後は、知識や技術を向上させるだけでなく、患者さんやご家族をサポートするために医療者側のチームワークを良くし、チームのパフォーマンスを向上させるために、どうすればよいのかを考えるようになった。

チームワークを良くするためにMBTIを学ぶ

様々な世代のがん患者さんと知り合い、そのご家族、医療者と関わっていく中、人の「多様性」についてもっと理解を深めていきたいと思い、心理学者ユングのタイプ論をもとにしたメソッド、MBTI(エムビーティーアイ: Myers-Briggs Type Indicator)を学びはじめた。

私たちは、同じ言葉を聞いたり、同じ物を見たりしても、人によって感じ方や考え方が違い、起こす行動まで違うことをしばしば目の当たりにする。MBTIは、自己理解を深め、人と人との違いを理解してお互いに尊重しあえることを目的に作られたメソッドであり、人間関係作りに役立つと考えられている。

医療は人と人との繋がりを基に成り立っており、特に人の生死に関わるがん医療に携わる私たちは、患者さん・ご家族・他の医療者とのミスコミュニケーションをできるだけ減らし、最高のがん医療を提供できるように協力していかなければならない。そのために、MBTIは、チームワークを良くする有効かつ実践的なメソッドであると考える。

「人をみる」ことにやりがいと喜びを感じて

いま、多くの方々の助けを得て、遺伝性腫瘍の診療に取り組みはじめたところである。がんと遺伝というデリケートな内容であり、様々なコミュニケーションスキルが要求され、患者さん・ご家族から多くのことを学ばせていただいている。「人をみる」ことは、どれだけ力を注いでもパーフェクトになることはないかもしれないが、腫瘍内科医としてがん医療に携わり、「人をみる」ことにやりがいと喜びを感じている。

(2013年 3月執筆)

ちょこっと写真、ちょこっとコメントMy interest at a glance:

「一期一会」、中学の卒業文集に書いたテーマである。

喜んでいるとき、怒っているとき、哀しいとき、楽しいとき、そのひと時に時間を共有することは一生に一度きりだから、いつも出会いを大切にしたいと思う。

カメラが趣味ではないが、携帯電話のカメラがよくなり、日常の何気ないひと時を写真にする機会がふえた。

写真は2013年2月10 日に米国サンフランシスコにて撮影したもの。

(2013年 3月執筆)

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